右へ右へと票が流れた
7月20日、参議院選挙の投開票が行われた。
投票日が連休の中日に設定されたこともあって期日前投票は過去最高となり、最終的には投票率が58.51%となり、前々回の48.80%、前回の52.05%を上回った。
開票結果はすでにご存じの通りで、大枠では予想された結果に近かったと言えよう。
ざっと見ていくと、自民党が13議席減、公明党が8議席減となり、与党の議席は参議院の半数124を割り込むこととなった。
野党は、立憲民主党が増減なし、国民民主党は13議席増と大幅に増やし、維新とれいわがそれぞれ1議席増となった。共産党は3議席を減らしたため一党単独での法案提出ができなくなった。
最大に伸びたのは参政党で、改選前は2議席だったのを15議席まで伸ばした。また、日本保守党も初めて2議席を獲得した。
こうしてみると、自公から減った票と投票率が上がって増えた票が右派の新興政党に大幅に流れ込んだ選挙だったと言えるのではないか。
表明していない首相の辞意を報じた新聞
翌21日に石破茂首相は続投を表明したが、そこから一気に石破下ろしの風が吹き始めた。
23日午前、毎日新聞がネット記事で「石破首相、退陣へ」と報じ、同日の午後には読売新聞が『石破首相退陣へ』と題した号外を出した。
「石破首相(自民党総裁)は23日、参院選で自民、公明両党の与党が大敗した責任を取って退陣する意向を固めた」
この日、石破首相は午後2時から自民党本部で麻生太郎、岸田文雄、菅義偉の3首相経験者と会談し、終了後にマスコミに対して退陣の意向を明確に否定した。
「私の出処進退については一切話に出ていない。一部に報道があるが、私はそのような発言をしたことは一度もない」
だが、毎日新聞も読売新聞も、翌日の朝刊の第一面には「石破首相退陣へ」と大見出しを打った。
つまり新聞というメディアが事実と異なった報道をしたことになる。
その後も、新聞各紙の社説は「石破は大敗の責任を取って退陣すべき」との主張をかかげ、テレビの報道番組などもその論調のものが多いように感じる。
戦後80年談話がカギ?
25日には、人々が官邸前に集まって「石破やめるな」と声を上げたが、石破首相退陣後により右派の人物が首相の座に着くことを恐れているのだろう。
自民党内で、誰が石破下ろしの声を上げているのかを見てみよう。
例えば西田昌司参議院議員。西田議員は先日、ひめゆりの塔をめぐって「歴史の書き換え」との暴言を吐き、石破首相が沖縄に対し謝罪をして尻ぬぐいをしている。
あるいは自民党青年局長の中曽根康隆衆院議員(元首相・中曽根康弘の孫)。中曽根議員は2023年にセクシーダンサーを招いた懇親会の件で青年局長代理を辞任している。
29日のテレビ朝日の番組で、石破茂首相(党総裁)は参院選大敗を踏まえて退陣すべきだとの認識で一致したと明らかにしたのは、世耕弘成(すでに自民党を離党)、萩生田光一、西村康稔、松野博一の4人。彼らはいずれも旧安倍派の裏金議員たちだ。
今回の参院選における自民党の敗北はむしろ、こうした数々の問題についての無反省が招いたものではないだろうか。
彼らをはじめとした自民党議員たちが石破首相を一刻も早く退陣させようとしているのは、ひとつには8月15日が迫っているからだという説がある。
安倍晋三元首相の「70年談話」を上書きされたくないということらしいが、やはり正しい歴史認識にもとづき真摯な反省に立った談話を発表することは、アジアの一員としてとても大事なことではないだろうか。