高市首相の「自己都合解散」
1月19日、高市首相は会見を開き、23日からの通常国会の冒頭で衆議院を解散すると発表した。
いわゆる7条解散(「天皇の国事行為」を定めた憲法7条を根拠とし、無理にこじつけて可能だと解釈した首相による衆議院解散)である。
年度末までの来年度予算成立を第一に目指すべきはずの時期に衆議院を解散し選挙を行うとは、首相としての責務を放棄した「自己都合解散だ」と非難されても仕方がない。
前回の衆院選は2024年10月に行われ衆院議員の任期4年のうちまだ1年3カ月しか過ぎておらず、2025年7月には参院選があったので、国政選挙が3年連続で行われることになる(ちなみに1回の選挙に費用が780億円ほどかかり、その期間は国会の審議が停滞する)。
この時期は、年度末で自治体職員は多忙を極め、入学試験なども重なり、北国では雪深い季節となる。選挙がもっともためらわれるはずの時期だ。
また今回は、衆院解散から投開票日までの期間が16日と戦後最短になるため、選挙の準備が間に合わないと各方面から悲鳴が上がっている。
就任時には「物価高対策を最優先としたい」と語った高市首相が、なぜそれを放り出して選挙に打って出るのか。
冒頭の「高市さんは働く前に解散か」というのは、毎日新聞で見出しに使われた有権者の言葉だが、多くの人が共感するのではないだろうか。
有権者に白紙委任状を求めるのか
19日の会見で首相が語ったことは、簡単に言うと「公明党との連立をやめて維新と組むことになったので、選挙で改めて信任してもらえるのかを国民に問いたい」ということかと思う。
だが、日本の首相は有権者が直接選んだわけではないので、「首相の信任を国民に問う」という物言いは的外れだし、政権与党がどこと連立するかは国民にとって解散選挙に値するほどの大きな要素ではないというのがおおかたの判断だろう。
もし選挙の結果、高市首相が言うように与党が過半数の議席を取った場合(実は今とほとんど変わらない議席数だが)、国民の信任を得られたとして何がしたいのか。会見ではこう語られた。
「その後政府が提出しようとしている法律案、これもかなり賛否の分かれる大きなもの…だからこそ、国会が始まる前に国民の皆様の信を問いたい」
「信任を頂けたら、これは力強く進めてまいります」
つまり、やりたいことがあって内容は今は明らかにしないが、とにかく国民は私を信じて白紙委任状を渡してほしい、と言っているわけだ。
その内容が、スパイ防止法なのか更なる軍事増税なのか健康保険制度改悪なのか憲法改正なのか、あるいはヨーロッパで復活しつつある徴兵制なのかそれ以外なのかは分からないが、議案も出さずに白紙委任を求めるのは、議会制民主主義の原則を踏みにじる行為だとしか言いようがない。
政権与党なのだから、解散などせず実現したい法案を議会に提出すればいいのに、なぜそれをしないのか。
予算委員会での追及から逃げたい?
白紙委任状に加えて、国会の予算委員会で追及されたくないから解散選挙で与党議員の数を増やして非難をかわしたい、結果はどうあれこの時期に選挙をすることで少なくとも予算審議の時間を削り追及を減らせるから、というのが高市首相のもうひとつの本音なのではないか。
そこまでして、いったい何を追及されたくないのか、ちょっと挙げてみよう。
- 高市発言(存続危機事態発言)による日中関係と経済状況の悪化:インバウンド激減、中国公演やアニメ公開中止、パンダ返還、レアアースや抗生物質の輸入停止。長期金利の異常な急上昇、円安物価高の加速など。
- 政治とカネの問題:いわゆる裏金問題(政治資金パーティー券をノルマ以上に売った場合に党からキックバックがあったが帳簿不記載で脱税している問題)、企業献金の規制強化、政党交付金など税金の不公正な使われ方など。
- 連立与党(実は閣外協力)である維新の不祥事:国保逃れ、給付金の不正受給、大阪万博の工事費未払い問題など。
- そして何よりも、いま韓国で連日報道されている旧統一教会との癒着の問題だ。
旧統一教会は、日本の人口を削り国民を貧しくすべきだと教義に書かれていて日本の信者から巨額の金を収奪した韓国のカルトであり、自民党は安倍晋三の祖父である岸信介の時代から長年にわたって深くかかわってきたことは広く知られている。
2021年の衆院選で応援を受けた自民党議員は290人とも言われ、信者が議員秘書などとなって党内部にも食い込んでいるという。
今週になって、萩生田光一議員が教会幹部と会食を重ねていたというニュースが韓国の新聞各紙のトップを飾ったが、日本ではなぜかほとんど報道されていないのも不可解だ。
こうやって挙げていくと、もはや高市政権はグダグダであることに驚くしかない。
野党は大政翼賛へと進むのか?
一方で、野党側にも大きな動きが起こっている。
公明党と立憲民主党が16日に「中道改革連合」を立ち上げ、衆院選に統一名簿を作って臨むことを決めた(参議院に関しては公明党も立憲民主党もそのまま残る)。
衆議院に関しては、いわば立憲民主党が公明党と合体し(あるいは公明党に飲み込まれて)、これまでの主張を大きく変え、安保法制を合憲と認め、原発再稼働容認に舵を切ることになる。
これまでに、立憲民主党に所属している衆議院議員148名のうち、144名が中革連に移るという発表があった(2名は引退、1名は無所属、1名は政治団体立ち上げか)。
思い返してみれば、公明党は高市政権になって自民党との連立を降りたが、それまで26年にわたって自民党と共にやってきたわけで、それに対して批判も総括もまったくなしに野党第一党である立憲主党が合体するというのは、ちょっと簡単には飲み込めないというのが正直な感想だ。
もし自民党総裁が高市早苗でなくなったとしたら、公明党は再度自民党と連立を組まないと言えるのか?
そうなった場合に立憲民主党はどういう立ち位置を取るのか。そして自民党を正面から批判できるのか。
今後の動きが注目される。
