税収も国民負担率も上昇傾向
前にも書いたように、日本の税収は7年連続で最高額を記録したが、当然ながら国民負担率(租税負担率と社会保障負担率を合計したもの)も高止まりしていて、2025年度は46.2%を見込んでいるという(財務省HPによる)。
つまり、私たちは年収のほぼ半分を、税金や社会保険料(これも税金の一種)として徴収されているわけだ。
これが教育や福祉やインフラ整備に手厚く回されているなら納得もできるが、医療費は削られて多くの国公立病院が赤字経営となり、患者負担(高額療養費制度やOTC類似薬など)も引き上げられようとしている。
おまけに、道路が陥没するなどインフラはガタガタ、福祉や介護に至っては国が決める給与が低いままで事業所が次々と倒産している。
統計を見ると、日本はこの約30年のあいだに非正規雇用が4割に達し、所得の中央値が140万円も下がったというのだから、まったく貧しい国になったものだとため息が出る。
軍事大国を目指すのか
ここ1年を見ても、景気は低迷して倒産件数が年間1万件を超え、円安を主因とする物価高で生活は苦しくなり、実質賃金はすでに統計の出ている10月まで10カ月連続のマイナスを記録している。
これだけ経済が悪化しているのだから、税金を下げることで景気を上向かせるなどの手を打つべきだが、どうやら政府はそのつもりはないらしい。
17日に閉会した特別国会で決まった2025年度補正予算を見ると、景気立て直しや物価高対策にはほとんど予算を使わず、防衛費および関連経費で1.1兆円を計上し、25年度の防衛費は2027年到達目標のGDP比2%を早々と達成することになりそうだ(ちなみに中国の防衛費はGDP比1.2%)。
高市首相などの発言を聞いていると、周辺国との対立を意図的にあおり国民の不安をかき立てることで、軍事大国になる道をひたすら進もうとしているように思えてしまう。
相続税は日露戦争のために始まった
戦争が迫ってくると、国は国民からより多くのお金を集めて軍備につぎ込み、軍需産業など一部の産業だけが儲かるようになる。
よく知られた話のようだが、日本に相続税が導入されたのは、明治38(1905)年、日露戦争の戦費をまかなうためだった。
国税庁のHPによると、日露戦争(1904-05年)の戦費がかさんだため「非常特別税法(戦時に限られた増税)」が次々と決められ、相続税はその一環として創設された。
その際に、相続税は諸外国では恒久的な税金とされている例が多いとして、戦争終結後も存続するものとされたという。
また、日本で所得税の源泉徴収が開始されたのは日中戦争が始まって3年後の昭和15(1940)年、納税者の捕捉などを目的として導入された。
それ以後、軍事費捻出のために税率の引き上げや基礎控除額の引き下げが相次いで行われ、納税額や納税者数が増加して滞納者が増えたため、源泉徴収が徐々に強化されていったという。
さらに今の厚生年金の元となった年金制度は1939年に船員を対象として始まり、1944年までにほぼすべての労働者にまで拡大されたが、加入者のためだけでなく戦費のために保険料を集めることも目的のひとつだったのではないかと勘ぐりたくなる。
維新議員の「国保逃れ」問題
さて、社会保険のひとつである国民健康保険の保険料(=国民健康保険税)が高すぎるという嘆きの声をよく聞くが、今、維新の会の議員が脱法的な手法でこれを回避しているのではないかという疑惑が浮上している。
この疑惑は、大阪府議会で自民党の占部議員が吉村知事に対して質問をしたことから始まった。
占部議員によると、「フリーランス向けの国民健康保険料対策」としてネット上などで広まっている脱法的な手法があるが、これを維新の議員などが使っているのではないかという疑惑だ。
簡単に言えば、一般社団法人が希望者を理事にして、協力金などの名目で資金を徴収しそこから少額の報酬を支払うことで、社会保険加入資格を得させて制度を脱法的に利用するものだという。
法人にほぼ実態はなく、理事の実働もアンケートへの回答といった程度らしいが、これを利用することによって、ある試算によれば、年間100万円超の保険料を20万円ほどに抑えることができるようだ。
占部議員は、ビジネス交流会で同手法の勧誘を受けた人物から相談を受けたという。
相談者が勧誘者に「違法ではないか?」と尋ねたところ、勧誘者は「維新の会の議員も多く利用しているので問題ない」との説明をうけたとか。
登記簿を調べてみると、この法人の代表理事は「維新の会の衆議院議員の元公設秘書で、県議選の公認候補者」であり、理事がなんと660名もいて、中には維新の会の議員と同姓同名の理事も複数確認されたという(12/27には、実際に維新の議員が含まれていると吉村代表が認めた)。
さらに、入会案内では《社会保険に加入して節約できる》とはっきりと明記してある。
加えて、勧誘に成功すれば報酬が出るとか、このスキーム自体を売っていた、維新関連のLINEで勧誘が流れた、といった疑惑まで囁かれているようだ。
社会保険料の削減を政策のひとつとして掲げてきた維新の会だけに、もしも組織的にこの脱法的手法を使っているのであれば、大問題だろう。
国会ですでに国民民主の足立議員(元維新)が追及を始めているが、今のところ大きな報道はない。
政権与党に対して臆することなく、マスコミがこの疑惑を追及することを期待したい。
