自公連立解消と高市内閣
10月21日午前中に閣議が行われ、石破内閣が総辞職をした。
午後に開かれた臨時国会では、衆参両院でそれぞれ首班指名選挙が行われ、自民党の高市早苗総裁が女性初の首相に就任した。
10月4日に行われた自民党総裁選で高市氏が新総裁に選ばれたあと、そのまますんなり首班指名かと思っていたら、10日に公明党が26年続いた自民党との連立解消を決め、大きな衝撃が走った。
連立解消の理由として、公明党からは「政治とカネ」の問題が挙げられた(本音では自民党と共に沈んでいくのを避けたかったのかもしれない)。
つまり、企業・団体献金の規制強化や派閥裏金事件の真相解明を以前から再三求めてきたが、高市総裁から十分な回答が得られなかったためだという。
党執行部の人事、特に幹事長代行に裏金議員の萩生田光一衆院議員を据えたことが決定的だったのではないかという推測も出ている。
ぬぐえない裏金問題
石破氏は、政権が成立してすぐ行われた昨年10月の衆院選、そして今年7月の参院選での大敗北の責任を問われての総裁辞任と言われているが、結局は裏金問題を解決できなかったことが自民党の致命傷となったのは明らかだ。
党の政治資金パーティでのノルマを超えた分の収益を帳簿に記載せず、もちろん税金も払わずに事務所の引出し(?)でマネーロンダリングしていたわけだから、これはもう立派な犯罪だ。
それなのに、その裏金が3000万円未満なら不起訴と検察が忖度し、3000万を超えた場合も起訴されたのは秘書のみで当然指示したであろう議員本人はお咎めなし、さらにそれを指南したはずの党の派閥幹部は名前さえ出てこない。
そんなことをしていれば国民の支持を失って議席を減らし、連立の相手に愛想をつかされるのは当然の結果だろう。
結局、自民党は維新の会との「連立政権」を組むことで高市内閣を発足させることを選び、副大臣や政務官クラスに裏金議員を登用することを決めた。
自民維新の連立政権と報道されているが、維新からは誰も入閣しない(閣僚を出さない)ので、正確には「閣外協力」だということは押さえておきたい。
落ち目同士の延命策?
一方の維新も、所属議員の不祥事の多さ、本拠地である大阪の経済的地盤沈下、既得権益を批判する側だったのがすでに既得権益の側、カジノ誘致のための万博開催、繰り返し出してくる大阪都構想といった理由で飽きられ、もはや党首がテレビ出演しまくっている関西放送圏以外では議席が得られなくなっている。
つまりは、落ち目の政党同士がお互いの延命のために手を組んで連立している、と言っても過言ではないだろう。
しかし、自民党批判で議席を伸ばしてきた政党が自民党と手を組んで、これからどう立ち回るのだろうかという疑問が浮かんでしまう。
ちなみに、あまり報道されていないが、自民党は参議院でNHK党(旧・NHKから国民を守る党/所属議員は斉藤健一郎氏のみ)と共同会派を組んだ。
参議院での首班指名選挙の結果を見ると高市氏はギリギリ過半数の得票なので、票数の確保から言えば自民党にとっては必要な決断だったのがわかる。
だが、あのガーシーを当選させ(斉藤議員はガーシー議員失職に伴う繰上げ当選)、東京都知事選でのポスター騒動や兵庫県知事選での二馬力選挙など、選挙制度をバカにしたような行動をとってきたNHK党と会派を組むことは、こうした議会制民主主義を愚弄するやり方を容認するのかという批判が自民党に対して起こっている。
高市内閣が目指すもの
さて、自民党と日本維新の会が20日に交わした「連立政権合意書」には高市政権が目指すものが12項目にまとめられているが、力の入れ方や具体性に濃淡があることが読み取れる。
25年臨時国会中に行うと特に明記されているのは、以下の通り。
- ガソリン税の旧暫定税率廃止(すでに与野党合意済みだったもの)
- 憲法9条改正のための条文起草協議会の設置
- 緊急事態条項(国会機能維持および緊急政令)条文起草協議会の設置
- 衆院議員定数の削減
25年臨時国会中に行わないと明記されている(あるいはそう読み取れる)のは、以下の通り。
- 2万円の給付金(参議院選挙の公約だったもの)
- 消費減税(ほとんどの野党が参院選の公約に挙げていたもの)
- 政治資金改革
ほかに目指すとして列記されているものを挙げてみる。
- 医療制度改革(具体的には「OTC類似薬」の保険適用除外や11万床の病床削減ほか)
- 旧姓の使用拡大(選択的夫婦別姓はとらない)
- 反撃能力を持つ長射程ミサイルなどの整備
- 防衛産業の強化
- 国家情報局(諜報機関)の創設
- スパイ防止法の制定
- 国旗毀損罪の制定
- 原発再稼働
- 副首都構想(維新の都構想の後押しか)
こう見てくると、積極財政と言われている割には国民の生活のためには緊縮方向、軍備の拡大には前のめりなのがわかる。
さらには「ナチスの手法に学び、いつのまにか改憲を」と発言した麻生太郎の後押しがあることや、総務大臣だった2016年にNHKを電波停止にすると脅したことが頭に浮かぶ。
なんだかさらに不自由な世の中になりそうだし、戦争の足音も聞こえてくるような気がしませんか?
