イスラエルの先制攻撃で始まった
6月13日、イスラエルはイランへの先制攻撃を行った。(念のために言うと、国際法上これは禁止されている行為である。)
イスラエルのネタニヤフ首相は「イランの核開発計画への先制攻撃を行った」として、核関連施設や軍事施設などを爆撃したことを明らかにした。
イラン政府は、この爆撃でウラン濃縮施設などが被害を受けたことや、核開発にかかわる科学者6人と何人もの軍幹部が死亡したことを認めた。
また13日午後、イランの国営TVは原子力庁の報道官イラン中部ナタンズにある核施設に再びイスラエルの攻撃があり、施設内部で放射性物質などによる汚染が発生しているようだと伝えた。(一部報道では、このプルームが16日頃から日本にも到達しているとも言われている。)
ネタニヤフがイランを攻撃したわけ
なぜ、この時期にネタニヤフがイランを攻撃したのか。
これについてマスコミの報道では、イランの核開発が加速していること、アメリカとイランの核開発についての交渉が停滞していること、イスラム組織ハマスとの衝突の余波、などが上げられている。
だが、表立って取り上げられないが、もうひとつの理由が根強く噂されている。
実はネタニヤフは汚職疑惑をかけられて裁判中であり、さらに、ハマスに捕われたイスラエルの人質が戻らないことやガザで続いているジェノサイドに対する国内の批判が高まって抗議デモなどが起こり国内で追い詰められている。戦争を始めてしまえば「緊急事態であるから」ということでそうした動きを封じ込めるとともに支持を伸ばして形勢を逆転できる、というのがネタニヤフが今回イランを攻撃した一番の理由ではないか、というものだ。
そして実際、イラン攻撃を行ったことでネタニヤフ支持の声はイスラエル国内で一気に高まったようだ。
破られたアイアンドーム
だが当然ながら、他国を攻撃すれば当然それは自国に返ってくる。
イランは反撃を宣言し、イスラエルの首都(国連決議上の首都)テルアビブに向けて弾道ミサイルを発射、イスラエルが誇る防空システム「アイアンドーム」をくぐり抜けて大きな被害を与えた。
SNSなどで、テルアビブ市街の中心にある国防省から迎撃ミサイルが発射され、病院の地下に軍本部が置かれているのを見ると、イスラエルは自国民を盾として使っているのがわかる。(イスラエル政府は今回、国内から自国民が海外へ出られないよう制限をかけた。イスラエル国内のアメリカ国民も足止めされているという話も流れている。)
その後、イランがイスラエル最大級の製油所を爆撃し操業停止に追い込むと、イスラエルはイラン国営放送のTV局を爆撃し、イランはテルアビブにある諜報機関モサド本部を破壊した。
そして、ネタニヤフはなんと、イランの最高指導者ハメネイ師の殺害が紛争を終結させると述べた。
これを受けて、アラブ連盟21ヶ国(人口4億6294万人)がイラン支持を表明した。
西側が見ているのはイスラエルのプロパガンダ
16日、G7首脳は声明を出し次のように述べたと報じられた。
「われわれはイスラエルに自国を防衛する権利があることを確認する。イスラエルの安全保障に対する支持を改めて表明する」
「イランは地域の不安定な情勢とテロの根源だ。(G7は)イランが決して核兵器を持てないことを明確にする」
しかし、先制攻撃をしかけたのは明らかにイスラエルである。イスラエルは何をしても許される立場にあるのか。そんな疑問が湧く。
同時に、イラン側から見るとまったく別の風景が見えていることは認識しておいたほうがいいだろう。以下はイランの有識者のTVでの発言だ。
「イランは隣国を攻撃したことはない。イスラエルは攻撃した」
「イランは核査察を受け入れた。イスラエルは拒否した」
「イランは核兵器を持っていない。イスラエルは最大400個の核兵器を保有している」
「イスラエルがイランを攻撃するのは、イランがパレスチナの味方をしているからだ」
日本(を含むいわゆる西側諸国)で流れているイスラエルに関するニュースは、公正な報道ではなくイスラエル政府の広報であることを私たちは認識しておいたほうがいいかもしれない。
イランとの戦闘に世界の目が向いている間も、イスラエルはパレスチナのガザでジェノサイドを続け、ヨルダン川西岸地区で占領行為を進めている。