バックミンスター・フラーの教え
ロバート・キヨサキが書いた「金持ち父さんの予言」(筑摩書房刊)は、迫りくる金融の嵐に対して備えをしようと呼びかけるものだ。
この本のなかでキヨサキは、彼がよき師と仰ぐ天才学者バックミンスター・フラーの考えを紹介している。
フラー博士は、政府が時代遅れになっていると考えていた。
政府が弱くなったために、人間性が発達するか消滅するかの瀬戸際に立たされていると。
人類は、いま私たちが考えているような人間性を持ち続けるためには、より誠実で一貫性のある個人によって作り出されるユートピア的世界か、より大きな政府か、いずれかを選ばなければならないと考えていた。
つまり、フラー博士は、問題を政府に任せるのではなく、一人ひとりの人間がより多くの問題を解決していく必要があることを示していたのだ。
大きくなりすぎたもの
バックミンスター・フラーの教えは何冊も本にまとめられ、現在も読み継がれている。
簡単には説明できない独創的で刺激的な考えに満ちているが、そのなかから一つキヨサキが紹介しているのは「短命化」という原理だ。
「短命化」について、キヨサキはタイタニック号のたとえを出して次のように説明している。
人類は原始時代、丸太で流れを下るうちに船を思いつき、丸太を削ってカヌーを作り、木の板を使ってボートを作り始めた。
その後技術の発達とともに木製の船はどんどん大型化し、さらに鋼鉄を使った造船技術によってますます大型化し、世界じゅうに人や物を運ぶようになった。
そして船舶の大型化はタイタニック号の悲劇が起きるまで続き、タイタニック号の沈没からまもなくして、船の黄金時代は終わった。
これは要するに、テクノロジーが巨大化しすぎるのだとフラーはよく言っていた。
情報時代と政府のありかた
世界の動きをみていると、政府がうまく機能していないのではないかと思えることが増えている。
政府も船と同じように巨大化しすぎたのかもしれない。
歴史をたどってみると、今ある政府という組織は、産業時代の副産物だということがわかる。
そして今、インターネットが発達するとともに、姿を見せずに大きなビジネスを操っている人たちが増えている。
キヨサキが繰り返し言っているように、産業時代から情報時代へと世界が大きく変化しているのだ。
経済も人も、国を超えて活動していく世界で、政府がこれからもすべてを把握して税を徴収することは可能なのだろうか。