アメリカで始まった情報統制
イスラエルとアメリカによるイラン攻撃が始まって2週間が過ぎた。
双方からのプロパガンダの応酬によって、実際の戦況は正確にはわかっていないが、イスラエルと米国はイランの首都テヘランと石油関連施設を爆撃し、イランはイスラエルの商都テルアビブをはじめいくつかの都市と中東諸国に置かれた米軍基地を爆撃していることは伝わってくる。
ただ、イランはアメリカのTV局CNNを国内に入れて取材を許可しているのに対し、イスラエルでは国内の状況を映した動画をネットに上げると逮捕され、アメリカでは放送事業を監督する連邦通信委員会(FCC)のトップが14日、中東での紛争に関する否定的な報道(政府の発表と異なる報道)をすれば放送免許剥奪もあり得るとメディア各社に警告を発した。
そうした規制にもかかわらず、近隣諸国の米軍基地の被害やイスラエル国内の混乱などがSNS上に漏れ出してきているのが現状だ。
加えて、ヘグセス国防長官が記者会見で、イランとの戦争における米軍の死傷者数についての明言を拒否しているのも気になるポイントだ。
どの国が非難されるべきか
もともとイスラエルとアメリカの先制攻撃から始まった紛争にもかかわらず、国連安保理理事会は11日、イランによる中東の湾岸諸国への攻撃を非難する決議案を、15カ国中13カ国の賛成多数で採択した。
イランにすれば、突然の爆撃で指導者を殺害されたため米軍基地に対して反撃しているわけで、先制攻撃をしかけたイスラエルとアメリカを国連安保理が非難しないのは不公正だと感じるのは当然のことだろう。
当初アメリカが言っていたのは「イランの民衆を圧政から解放するため」だったが、1月の反政府デモで3万人が殺されたというのはどうやら人数が10倍以上に過大評価されていること、このデモを先導していたのは、イスラエルのモサドやアメリカのCIAのエージェントだという見方が強いことなどを考え合わせると、これに対しても疑問が湧き上がってくる。
これまでイランの軍勢力はほとんど壊滅しもうすぐ紛争は終わると発言していたトランプ大統領は、14日にはtwitter(現X)上でホルムズ海峡の封鎖に触れ、「影響を受けている中国、フランス、日本、韓国、イギリス、その他の国々がこの海域に軍艦(warship)を派遣することを望む」と協力を求めた。
併せて「フィナンシャルタイムス」のインタビュー記事では、NATO加盟国(32カ国)にまで同様の要望をしている。
日本のタンカーはホルムズ海峡を通れるか
イランのアラグチ外相(東日本大震災のときの駐日大使として知られる)は「我々と話し合いたい国には門戸が開かれている」と呼びかけていて、インドやトルコをはじめ各国がホルムズ海峡通航の許可を求めてイランと交渉している。
インドはイランの潜水艦が今月初めにインド近海で米軍に撃沈された件にかかわっているし、トルコの企業は実はイスラエルに武器を売っていると言われているが、それでも交渉の結果、中国、ロシア、トルコ、バングラデシュ、インドのタンカーはホルムズ海峡通航の許可を得た。
一方で、イラン元革命防衛隊司令官は先日「日本の米軍基地がイラン攻撃のために利用されているとの情報を得たらアラブ諸国同様に攻撃するだろう」と警告を発した。
つまり、イランは自国を攻撃したイスラエルとアメリカは許さないが、そのほかの国との争いは避けたいと思っていることがわかる。
先日、高市首相は日本政府主催のイフタール(イスラム教のラマダン明けの大切な食事)の催しを「風邪の疑い」という口実で欠席し、中東諸国の大使たちとの親睦のチャンスを生かすことができなかったが、はたしてこうしてイランから差し出された救いの手を握ることができるのだろうか。
これは日本の存続の危機
3月19日から、高市首相は訪米を予定している。
もともとは台湾有事が起こった際に日本の側に立ってくれるように米国に求めるために設定されたが、今訪米すれば、トランプ大統領からイラン紛争への参加を求められるのは明らかだ。
朝日新聞社が3月14、15日に行った電話による全国世論調査では、米国のイラン攻撃について「支持しない」は82%に達し、「支持する」は9%だったという。
アメリカからホルムズ海峡への軍艦の派遣を求められた国々はどこも断っている現状で、もし高市首相だけがこの要求を呑むとしたら、日本は戦争犯罪者であるイスラエルとアメリカの側に立つと国際社会に向けて明確に表明することになる。
親日家として知られるイランのアラグチ外相も、日本に対して軍事作戦に巻込まれないようにと呼びかけているのだから、参戦せずに交渉すれば、日本のタンカーもホルムズ海峡を通れるだろう。
もしアメリカの言うままに軍艦を派遣した場合、日本は戦後数十年にわたり平和憲法と全方位外交によって築いてきた平和国家というイメージを完全に失い、国際紛争に巻込まれ、それ以降はエネルギー資源がどこからも入ってこないことになるだろう。
国内では訪米中止をと官邸にメッセージを送る人やデモに参加する人が増えている。
だれもが日本の軍事行動をなんとか止めたいと思っているからだ。
