2024年度米はどこへ消えた?

  1. 小泉劇場がTVを席巻
  2. 参院選に向けたパフォーマンスか
  3. 民主党の所得補償制度を自民党が潰した
  4. アメリカ産米の流入と日本の農業のゆくえ

小泉劇場がTVを席巻

5月21日、「米を買ったことがない」発言で江藤大臣が辞任し、代わりに小泉進次郎が農水相に就任すると、TVがこぞって取り上げるようになった。

就任会見で小泉新大臣は、政府備蓄米を入札ではなく異例の(違法の可能性もあるとされる)随意契約で特定の業者に払い下げることで、迅速に安い米を届けることを目指すとした。

古古米(2022年度米)、古古古米(2021年度米)が5kg2000円(税別)で大手スーパーで売り出されると、早朝から並ぶ客の列、積み上げられた米袋、店内を視察する小泉農水相、米を手に入れて喜ぶ客、といった映像が繰り返し映し出され、「小泉米」などと言い出すTV局まで現われた。

いかにも、有能な農水相に交代したために低価格の米がスピーディーに提供されて国民は満足している、といった方向に誘導していきたいのが透けて見える内容だ。

さらには古古米の味はどうか、美味しく食べるにはこういう工夫があるなどといった話題ばかりが溢れるようになってきた。

参院選に向けたパフォーマンスか

しかし、主にJAが落札した備蓄古米(2023年度米)をブレンドした「パールライス」は江藤大臣のもとで進められていたものだし、大手スーパーなどに備蓄古古米を卸して販売したのも、そのスピードから考えておそらくは事前に準備が進められていた「出来レース」だろうと容易に推察される。

それにこのペースで市場に出していたら、もともと100万tほどしかない備蓄米自体が早々に底をつくのは目に見えている。

こうしたことを考え合わせれば、今回のことは7月に予定されている参議院選に向けた自民党のパフォーマンスだとしか受け取れないだろう。

だが、備蓄米というのは「大災害などに備えて蓄えた米」であり、新米のときには16~17%ある水分量が保管と共に13%くらいまで減少し、あわせて食味も落ちていくという。

4年後には家畜の飼料用にキロあたり100円以下で払い下げてきたというものを、国民が困っているときに5kg2000円で売るのはボッタクリがすぎるのではないかという気もする。

問題はそもそも、なぜ米の値段が1年で約2倍にまで値上がりしたのか、さらにはなぜ2024年度米が店頭に見あたらないという状態が生じたのか、ということだろう。

その原因を政府が語らず、またマスコミがそれを調査報道することもせず政府の公報に徹するという現状には、驚き呆れるしかない。

民主党の所得補償制度を自民党が潰した

思い返してみると、昨年の米は不作ではなかったはずだ。むしろ作柄はいいという報道があったように記憶している。

昨年の2月頃からすでに需給逼迫で米価が上がるのではという懸念が報じられていたが、政府は「新米が流通し始めれば解消する」とかたくなに認めようとしなかった。

いったい2024年度米はどこへ消えたのか?

もしかして、長年続けてきた減反と農家の冷遇、加えて政府が促進してきた米の輸出によって、そもそも日本国民が食べていくには米の生産量が足りていなかったのではないか?

もしそうだとすれば、今回の小泉劇場は7月の参議院選挙に向けて自民党の政策の失敗をごまかすための悪質な茶番だったということになる。

自民党が、民主党政権が2010年から導入した農業者戸別所得補償制度(米・麦・大豆などの販売価格と生産費の差額を政府が直接支払う仕組み)を政権復帰後に潰してきたことはあまり知られていないかもしれないが、2015年から自民党農林部会長を務める小泉進次郎はこれに無関係だとはとても言えないだろう。

ちなみに6月2日には、石破総理大臣がコメの安定供給に向けた関係閣僚会議の設置を表明し、それを受けて公明党の斉藤代表が「減反政策を見直すべき」と述べている。

アメリカ産米の流入と日本の農業のゆくえ

気になるのは、今回の備蓄米の放出がどのような影響をもたらし、今後何が起こるのかだ。

まず、政府備蓄米という制度がどうなるのか。

今回備蓄米を大量放出してほぼ空になった倉庫に再度米を積み上げることが可能だとしても年単位の時間がかかるため、倉庫会社は受取るはずだった月4億6千万を失い廃業を検討する可能性も出ているという。

次は、結果として5キロ2000円という価格を政府が提示した形になったこと。

米作農家からは今回の5キロ2000円という放出備蓄米の価格を見て、せっかく上がった米の価格がまた下がるのか、これでは生活していけないとガックリしているという声が上がっている。

そして、外食産業を中心に、アメリカ産米が大量に流入していること。スーパーなどにもカリフォルニア米が並んでいるという。

これまで自民党政権は、自動車などの輸出産業を守るためにさんざん農産物の自由化を受け入れ日本の農業に犠牲を強いてきたが、今回のことをきっかけにコメまでもが輸入もの中心になってしまうのか。

また、大量のアメリカ産米が輸入されるようになった場合、ただでさえ高齢化し先行きが不安な日本の農業はどうなるのか。

最後に、日本の農業がさらに衰退していった場合、JA(農業協同組合)はどうなるのか。

小泉進次郎というと、その父・小泉純一郎が郵政を民営化しゆうちょマネーを外資に売り渡したこと、進次郎もまたジャパンハンドラーと言われる人たちとのつながりが強いことを、どうしても思い出してしまう。これでまたジャパンマネーが海外に流出して我々の富が奪われていくことになるのだろうか。