「老後は2000万円必要」がなかったことに?
5月22日に金融庁の審議会が示した「老後の生活のために2000万円の資産形成を」という提案は広い範囲で反発を生んだが、その後も波紋が広がっている。
これは厚労省などの資料をもとにファイナンシャルプランナーその他の有識者が集まって協議を重ね出されたものだが、国民の反発が収まらないのを見て、麻生財務大臣は6月11日に「この報告書は受け取らない」と言い出した。
さらに自民党の森山国対委員長が「我々は選挙前だから影響を及ぼすようなことがないよう……」「夫婦ともに90歳まで生きるのは14%(なので心配ない)」「この報告書はもうなくなった」などと発言したことが報じられ、さらに炎上している。
だが、とりあえず注目しておきたいのは、国会の決算委員会の審議の中で大塚議員の質問で明らかになった、年金請求書の件だろう。
「まるで詐欺のようなやり口」との批判も
年金受給開始年齢の人は、送られてきた年金請求書の説明に従って葉書を出すことで年金受給ができるようになっている。
だがその説明書のチャートでは、「受け取る年金を増額させますか?」という問いにイエスと答えるとハガキを送らないでいいという選択肢に誘導され、自動的に70歳支給開始を希望したことになってしまう。
たしかに、受給開始年齢を繰り上げれば年金支給額が増額される、という報道はされているが、この年金請求書の手続ではそのことについての説明がないという。
これについて「まるで詐欺のようなやり口ではないか」という厳しい批判の声も出ている。
やはり老後の資金は不足している
もちろん受給年齢を繰り上げて年金増額を望む人もいるだろうが、とりあえず年金を受け取りたい人もいるので、これは詐欺とまでは言わなくても不親切という指摘は免れないだろう。
「まだ年金受給など先の話だから」と言う人も、できればこのことを身内や周囲の人に教えてあげてほしい。
ちなみに報道によれば、6月13日にスイスのシンクタンク「世界経済フォーラム(WEF)」が、「日本では老後の資金が不足して、蓄えに頼らずに生活しなければならない期間が15~20年にも及ぶ」とする報告書を公表したという。
どうやら金融庁の審議会報告はあながち間違っていないようだが、はたして麻生大臣の言うように「なかったもの」になってしまうのだろうか。