お金が突然、紙くずになる日

  1. 表は4時間前
  2. 悲観して自殺する者も
  3. いつでもどこでも起こりうること

表は4時間前

日本ではあまり大きく報道されていないようだが、インドでは今、経済に大きな混乱が起きている。
株価が下落し、国債が値上がりし、銀行のATMに人が並び、貴金属店の店頭には金(ゴールド)を買い求める人が殺到して価格が上昇しているらしい。

その原因は、11月8日の夜のテレビでモディ首相が突然、現在使われている1000ルピー(約1600円)と500ルピー(約800円)の紙幣を、4時間後に廃止すると発表したことにある。

首相の説明によれば、今回の措置は偽造紙幣や脱税、汚職の防止のためだというが、さしずめ日本だと、一晩のうちに現行の1万円札と5千円札が紙くずになってしまう、というような衝撃的な状況だ。

悲観して自殺する者も

もちろん、旧紙幣は効力を失ってはいるが、年内は銀行で預金することも、金額の上限はあるものの新紙幣に引き換えることもできる。

だが、ちょうど土地を売ってまとまったお金を受け取っていたある女性が、手元の札束が一瞬で紙くずになったと思い込み自殺した、というニュースも流れている。
インドでは銀行に口座を持っていない人も多く、現金決済が主で、まだあまりクレジット決済は普及していないため、個人商店ではお客の買いだめによる品不足と旧紙幣をめぐる混乱が生じているようだ。

ATMで預金を引き出す際も、当面はカード1枚につき1日2,000ルピーまでとされ、20日頃から4,000ルピーに引き上げられるが、自分の銀行口座にあるお金を自由に引き出せないというのは、つまりは預金封鎖ということだ。

いつでもどこでも起こりうること

インドだからそういうことが起こったんだろう、と思った人もいるかもしれないが、実は日本でも以前に同じことが起こっている。

昭和21年2月17日に突然行われた、新円切り替えと預金封鎖だ。

この日、突如として日本中のすべての銀行口座が封鎖されて預金の引き出し額に制限が設けられ、同時に、旧紙幣の使用が禁止されて銀行から引き出した新円しか使用できなくなった。
これによって日本政府は、太平洋戦争で積み上がった政府借金の帳消しを行ったとされている。

はたして、こうしたことは日本ではもう起こらないことなのだろうか。
起こる可能性があるとしたら、いったいどんな手を打っておけばいいのだろうか。