初の女性大統領が誕生するはずだったのに……
11月8日に行われた大統領選挙で、『トランプ自伝』(ちくま文庫)やロバート・キヨサキとの共著『あなたに金持ちになってほしい』(筑摩書房刊)などを出しているドナルド・トランプが、第45代アメリカ大統領に選ばれた。
選挙前は、ほとんどのマスコミは初の女性大統領誕生がほぼ確実という論調だったため、この結果は驚きととまどいを生み出し、さまざまなことが言われている。
たとえば、こんな感じだ。
総得票数はヒラリー・クリントンのほうが多いのに、アメリカの大統領選挙制度(一つの州で過半数の選挙人を獲得したほうが、その週のすべての選挙人を得ることになる)の歪みのせいでこの結果になった。
ヒラリー・クリントンではなくバーニー・サンダースを候補に立てておけば民主党が勝てたのに、大企業べったりだと嫌われているヒラリーを立てたのが敗因だった。
これでトランプという差別主義者で超危険な男の手に核のボタンが渡ってしまい、彼はいつでも核戦争を始めることができる……。
有権者は経済が第一
一方でこんな声も聞こえてくる。
グローバル経済のせいで雇用が国外へ流れ出たことでアメリカは貧しくなっているところに、さらにオバマケアで医療保険の保険料がうなぎ上りとなり、有権者は一番心配なお金と経済の問題を考えてトランプを選んだ。
トランプの発言はセンセーショナルな部分だけが切り取られて繰り返し報道されることでマスコミが不安をあおってきたし、トランプもそれを利用してきた面がある。就任後は修正されていくだろう。
核戦争を引き起こすって?どんな経済的合理性があってトランプがそんなことをするんだ?何の儲けにもならないだろう。
副大統領候補のペンスをはじめ共和党の内部には本当の差別主義者がいるが、トランプは本当の差別主義者ではないのでまだましだ……。
マスメディア vs ネットメディア
別の角度からの指摘としては、今回の選挙は、マスメディア vs ネットメディアの闘いだった、という声も根強くある。
ウィキリークスによって、ヒラリーの私的メール事件や、クリントン財団への海外からの献金問題をはじめとするさまざまな暗黒面が明らかになり、1%のグローバル企業と癒着したその実態が少しずつ注目されるようになった。
対するトランプ陣営は、口コミで地道に支持を広げていったという。
さて、アメリカの政治が大きく舵を切ったことで、日本にはいったいどのような影響があるのか、これからしっかり見ていく必要があるだろう。