賃金の上昇が物価高に追いつかない
前回もすこし取り上げたが、日本では実質賃金が下がり続けている。つまり賃金の上昇が物価上昇に追いついていない状態だということだ。
今年3月の実質賃金は前年比で2.1%減少し、24カ月連続でマイナスとなった。2年間そうした状態が続いているということだ。
これはリーマンショック時の連続23カ月を抜いて過去最長だという。
今年の春闘では大企業中心に大幅な賃上げがなされたとの報道もあったが、それは一部の大企業に限られていて中小企業は賃上げしたくてもできないところが多い。
当然ながら労働者の4割を占める非正規雇用層には、賃上げはとうてい届いていかない。
ここ30年で消費税は3%から10%まで上がり、社会保険料(という名の税金)も大幅に増額されてきた。
それだけ私たちの手元に残る可処分所得は減っているわけで、これでは個人消費が増えていかないし、景気がよくなるはずもないだろう。
国庫は富み、国民は疲弊する
国の税収は大幅にアップしここ3年連続で史上最高となっているが、そのぶん国民は疲弊しているということだ。
食料品の無料配布に並ぶ人の数が過去最高だったとか、生活が困窮したために食料品を万引きし逮捕されたといったニュースも増えている。
今年2月に発表された国内総生産(GDP)は2期連続でマイナスとなり、日本は景気後退に入ったと海外メディアが報じた(その後、数値が訂正され景気後退は回避したとの続報あり)。
つまり、経済成長の鈍化と物価上昇が起こっているわけだが、ここに高い失業率が加わるとスタグフレーションと呼ばれる経済状況になると言われている。
たしかに現在の日本は高齢化による極度の人手不足のために失業率は高くないものの、非正規雇用の割合が高まって格差が広がり、社会的には不安定な状況であることは見逃せない。
円安と食料供給の不安
さらにもうひとつ、頭痛の種となっている経済要因として円安がある。
今の円安は、なぜかマスコミが最近言わなくなった「アベノミクス」つまり異次元の金融緩和政策により加速されたことは確かで、食料や燃料をはじめ多くの物を輸入にたよる日本の経済を圧迫している。
もはやアジア通貨のなかでもかなり低いレベルまで価値が落ちていると言われている円だが、この円安をどう解決していくのか、解決策は見えていない。
輸入品の価格が上がっているなら国産のものはどうかというと、主食である米の値段が2023年度米の不作や需要の伸びで大幅に上がっているというニュースが流れている。
こうしたことに危機感を抱いたのか、凶作や有事で食料危機に陥ったときに農家などに増産を指示する食料供給困難事態対策法が、23日に衆院本会議で自民、公明、日本維新の会の賛成で可決した。
この法律は、戦争できる国を目指す体制作りのひとつだとも言われているが、食料や燃料を自給できない国が戦争に突入すればどうなるか、わが国はすでに体験してきたのではなかったか。
食糧危機に陥ってから政府が増産を指示し、従わなければ罰金を課すなどという法律を作るよりは、ふだんから農家を支援する取り組みに力を入れた方がいいのは自明なのに、政府はなぜそれをしないのか。
明日食べる物の心配をしなければならない日がこないことを祈りたい気持ちだ。