7月8日の衝撃
第26回参議院選挙投票日の2日前、2022年7月8日午前11時半頃、奈良市内の大和西大寺駅付近で応援演説をしていた安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃され、命を落とした。
この出来事の衝撃を十全に受け止めるにはまだまだ時間がかかりそうだが、まずは故人の冥福を祈りたい。
報道では、現行犯逮捕されたのは41歳の男性で、旧統一教会への1億円を超える献金により母親が自己破産し一家離散となったことを恨みに思って、このカルトの集会にビデオメッセージを送った安倍氏を狙ったとされる。
当初は、政治的に安倍氏を批判するグループから影響を受けた政治的テロではないかといった憶測も流れたが、銃撃犯のものだと推測されるツイッターアカウント(今はツイッター社により凍結)からは、むしろ「ネトウヨ」「アンチフェミ」であったことが読み取れて、教団への恨みが主な動機であろうと言われるようになった。
旧統一教会とは何か?
旧統一教会(旧正式名称は世界基督教統一神霊協会、現在の名称は世界平和統一家庭連合で家庭連合と略称)は文鮮明により朝鮮半島で1954年に創設された。
キリスト教をベースにした新興宗教で家族のつながり(家父長制)を重視し、その教義においては日本は「エバ国家」=「サタン(悪魔)の国]」であるため、贖罪として「金のなる木」の役割を担い、「アダム国家」である韓国と国内外の統一教会に全てを捧げるべきとされている。
旧統一教会は、成立当初から勝共連合(反共産主義を掲げる組織)とほぼ同一であり、日本の勝共連合設立を後押ししたのは、右翼の大物で日本船舶振興会(=現日本財団)の創設者である笹川良一や安倍氏の祖父岸信介であった。
教祖である文鮮明を日本に最初に招いたのは自民党であり、安倍氏が率いる自民党の主流会派である清和会は、創設者の福田赳夫氏以来、深いつながりがあったようだ。(現在では日本維新の会や参政党なども旧統一教会との関係が深いことがわかっている。)
1990年代、霊感商法や合同結婚式で大きな社会問題を巻き起こし、サリン事件を起こしたオウム真理教に続いて警視庁は統一教会の取り締まりを目指していたが、「政治の力でそれはなくなったと聞いた」と現参議院議員でこの問題をずっと追ってきたジャーナリストの有田芳生は発言している。
ちなみに、日本の信者からの送金額は一説によると年間500億円とも言われ、また合同結婚式で行方がわからなくなっている日本人女性は累計6500人以上とされる。
カルトに牛耳られた三流国?
こうした事実を眺めてみると、2012年に示された自民党改憲案が旧統一教会の教義と驚くほど似通っているという指摘や、教育基本法が改正され道徳教育が始まったこと、新設されたこども庁の名称が最終的にこども家庭庁になったこと(これについては旧統一教会が賛意のメッセージを出している)など、最近の日本の政治の動きのなかに旧統一教会の影響が色濃く浮き上がってくる。
カルト教団と自民党が深く結びついていてどこが悪いのか、とピンとこない人もいるかもしれないが、一国の政治がカルト教団の影響を強く受けていると広く知られれば、国際的な信用は大きく損なわれるのは間違いない。
つまり、日本はカルトに牛耳られた三流国であるという評価がついてしまい、それは、外交面だけでなく、海外企業との具体的な取引といった経済的な面にまで深く及ぶことになるだろう。
もう一度、国民が政治のありかたに関心を向けて厳しく見ていくべき時だと思うし、マスコミが現状を明らかにしていく動きが加速し、政権与党のなかからも問題点を改善していく流れになっていくことを祈りたい。