保険証廃止は国民皆保険廃止への入り口か?

  1. 2024年秋廃止へ
  2. 新浪氏の「納期を守れ」発言
  3. 社会保障費削減を推進

2024年秋廃止へ

マイナンバーカードを健康保険証として使う制度、いわゆる「マイナ保険証」の不具合についての報道はまだまだ終わらないようだ。

マイナ保険証に登録している人は今のところ死亡した人を含めて国民の50%ほどのようだが、岸田首相は8月4日の会見で、この制度を推し進め2024年の秋に健康保険証を廃止する従来の方針に変更はないと表明した。

同時にこの健康保険証廃止はどうやら財界からの要請が元になっているのではないかというニュースが流れ、この健康保険証廃止ははたして何を目指しているのかといぶかる人が増えてきた。

そこでにわかに注目され始めたのが、この春、経済同友会の新しいトップについたサントリーホールディングス社長の新浪剛史氏の発言だ。

6月28日に行われた経済同友会代表幹事としての会見で、新浪氏はマイナンバーカードに不具合があることは認めながらも、次のように述べたという。

新浪氏の「納期を守れ」発言

そして、納期であります。この納期(2024年秋)に間に合うように、ぜひとも仕上げていただきたい。私たち民間は、この納期って大変重要でございます。納期を必ず守ってやりあげる。これが日本の大変重要な文化でありますから、ぜひともこの保険証を廃止する。これを実現するように、この納期に向けてしっかりとやっていただきたい

この発言に対し、ネット上では「納期」という言葉に違和感を感じて反発する人が増え、旧Twitter(現X)などのSNSでは #サントリー不買運動 というハッシュタグまで生まれた。

新浪氏といえば、思い出されるのが2021年秋に話題を呼んだ「45歳定年制」だ。

この発言はかなりの反発を喰らったため、定年という言葉はまずかったが45歳というのはビジネスパーソンとしての人生設計を考えるポイントとして大事くらいの意味だったといった好意的な解釈が付け加えられたりした。

しかし、健康保険などの社会保険は雇用者側が半分(あるいはそれ以上)を負担するため、社員が個人事業主になってくれれば会社としては大助かりなのは間違いないし、新浪氏の「45歳定年制」発言にそうした意図がまったく含まれていないとは思えない。

社会保障費削減を推進

今週になって知ったことだが、新浪氏は2015年に政府の経済財政諮問会議の下に設置された「経済・財政一体改革推進委員会」(医療を含む社会保障などの歳出改革の取組促進の仕組み構築や、改革の進捗管理・評価をする)の会長になっているようだ。

つまり、「納期を守れ」発言は、経済財政諮問会議の「経済・財政一体改革推進委員会」会長としてのものだったということだろう。

財界のトップの一人として政府与党に命令を下しているというわけだ。

新浪氏がこの「経済・財政一体改革推進委員会」会長に就任してから、安倍・菅内閣は社会保障費を6兆円近く大幅に削減してきた。

このまま社会保障費削減が続けば、いずれ健康保険は新浪氏が言うように民間に任されることになるのかもしれない。

近い将来、アメリカのように加入している医療保険によって受けられる医療が違ったり(人によっては手術が受けられなかったり救急車に乗れなかったり)ということになっていくのだろうか。