円の実質実効為替レートが過去最低に

  1. 円安が進み円の購買力が低下
  2. インボイス制度反対の署名が52万筆に
  3. インボイス制度が値上げを引き起こす

円安が進み円の購買力が低下

9月21日の報道によれば、国際決済銀行(BIS)が発表した8月の円の実質実効為替レートは、53年ぶりに過去最低となったという。

実質実効為替レートとは、簡単に言えば物価格差を考慮した円の実質的な価値を示した数値だとされるが、長引いたデフレに加えて幅広い通貨に対する円安が進んだことが響いているようだ。

これまで最低だった1970年8月はといえば1ドル=360円の固定相場制だったわけで、その時期を下回ったことで「日本経済はそこまで戻ってしまったのか」と衝撃を受けている人も多いようだ。

これは言うまでもなく、円安方向へと導いた「アベノミクスの成果」だろう。

「アベノミクス三本の矢」と盛んに言われていたが、第一の矢=量的金融緩和政策はたしかに行われたものの、第二の矢(機動的な財政政策)、第三の矢(民間投資を喚起する成長戦略)は不発に終わったという見方が大半だ。

インボイス制度反対の署名が52万筆に

実質実効為替レートが最低を更新したということは、当然ながらあらゆる輸入品が値上がりし、生活がさらに苦しくなることを意味する。

そんな生活不安と景気悪化の見通しのなか、政府が10月1日からインボイス制度を開始することに対して反対の声が大きくなっていることは前回も紹介したが、ネットでの反対署名はついに50万筆を突破した。

9月25日には官邸前で大規模な集会が開かれるとともに、集まった署名を財務省・国税庁・内閣府に届けたが、岸田首相(およびその代理となる人)は受け取ってくれなかったという。

テレビや新聞では、官邸前のインボイス制度反対の集会については報道されたものの、岸田首相が署名を受け取らなかったことにはほとんど言及していないようだ。

インボイス制度が値上げを引き起こす

現在、収入(売上げ)1000万円以下であれば消費税免税だが、インボイス制度が始まると、登録業者となれば売上げの10%を納税しなければならなくなるし、登録しなければ発注元から切られるリスクが生じる。

つまりはフリーランスや小さな企業にとって死活問題になりかねないレベルの増税ということだ。

生き延びるためには、商品やサービスの単価を大幅に上げていくしかないだろうが、値上げができなければ廃業することになるのだろう。

ちなみに、給与所得者の場合、例えば年収360万円~550万円であれば、現在は給与所得控除額「収入金額✕20%+44万円」がデフォルトで経費として認められているが、おそらくインボイス制度が始まればこれも縮小されていくだろう。

政府は今世紀に入って、公務員を非正規に置き換え、行政サービスを削りあるいは民間に移しているが、これはいわゆる小さな政府を目指す動きだと言っていいだろう。

それなのに、3年連続で税収が過去最高を記録しているにもかかわらず、さらに税収を増やそうとしているのはどういうことなのか。

2021年の日本の相対的貧困率は15.4%で、米国(15.1%)、韓国(15.3%)に抜かれ先進国最悪となったと報じられている。

国民がこれ以上疲弊しないために、私たちはいったいどうすればいいのだろうか。