利益相反と職業倫理

  1. 実はよく見かける現象
  2. 両手仲介という慣行
  3. 職業人としての公正さ

実はよく見かける現象

利益相反という言葉は、耳にしたことがあると思うが、使う機会はあまりないかもしれない。

辞書を引くと、「一方が利益を得るときに、もう一方は不利益を得ること」とあるが、そう聞いてもまだ意味がぼんやりとしている感じがする。

しかし、実は利益相反という行為はよく見かけるもので、職業人としての倫理とも関係してくる。

具体例を挙げてみよう。

たとえば不動産取引で、ある物件を売りたい人がいたとする。そこである不動産会社が、売主側の仲介業者となって、買いたい人を探し、買主側の仲介業者を兼任して売買を成立させ、両方から手数料をもらったとする。

実はこれは、利益相反と言われる行為だ。

両手仲介という慣行

不動産取引で売主側と買主側の両方から仲介手数料をもらうことを「両手仲介」と呼ぶが、こうした行為は日本では許されるものの、アメリカでは法律で禁じられている。

なぜかと言うと、売り手は高く売りたいと思い、買い手は安く買いたいと思っているため、その希望は本来相反するものであり、どちらかの利益になるようにすると、もう一方の不利益になるからだ。

本来なら、売り手側の仲介業者と買い手側の仲介業者が、それぞれの顧客の利益を守るために交渉するはずなのに、それを一人の業者が両方の役割を果たしている。

そのため、仲介業者の胸先三寸で、取引がどちらに有利にまとまるかが左右されてしまい、公正な判断ができないことになるからだ。

職業人としての公正さ

もしかしたら、仲介業者が片方からリベートをもらって、そちらに有利になるよう事を運ぶことだって起こりえるのだが、こうしたことに日本社会はかなり甘く、批判があまり出てこないように思う。

そうした行為が職業倫理に反しているのではないかと口にしたとしても、「まあまあ、そんなに硬いことを言わずに、大人になりましょうよ。お互いの得になるわけだし」などと丸め込まれ、釈然としないままに受け入れている場合もあるように思う。

職業人としてどの立場に立ち、だれの利益を守って考え行動するのか。

それを意識するのとしないのでは、大きく違ってくるのではないだろうか。