Eクワドラントから移動する
ロバート・キヨサキが不動産王ドナルド・トランプとともに書いた『黄金を生み出すミダスタッチ』(筑摩書房刊)は、起業家を目指す人にむけての力強い励ましのメッセージだ。
この本の最後に、キヨサキはキャッシュフロー・クワドラントのEクワドラントから他のクワドラントに移るために何が必要かについて語っている。
雇われて働くことをやめて起業したいと考える人は、EクワドラントからBもしくはIのクワドラントに移ることを目指しているはずだが、そのうちかなりの割合が結局はSクワドラントに移ることになる。
最初からSクワドラントを目指しているのならもちろん問題はないのだが、小さく考えるせいでSクワドラントから抜け出せない人がいるのが気になるとキヨサキは言う。
「小さく考える」とは、自分の専門技術や特色にこだわるあまり、ほかのことを受け入れようとしない姿勢を指している。
では、「小さく考える」ことから脱するためにはどうすればいいのだろうか。
セールス、システム、資本
そのためには、多くのことを新しく学ぼうとしなければならないとキヨサキは言う。
私たちが学校教育で学んできたことは、多くの場合、EクワドラントやSクワドラントに属するためのもの、つまり会社員や公務員になるか、専門職について働くためのものだ。
起業家になりたいと思うなら、ビジネスを構築するための考え方やスキルを学ばなければならないのは、ごく当然のことだろう。
「Sクワドラントで必要なスキル」は、セールスだ。
専門技術や特色があっても、売ることができなければ起業家にはなれない。
「Bクワドラントで必要なスキル」は、システムを作り、それを使ってビジネスを拡大することだ。
システムを作ることで、自分の力にレバレッジをかけることができる。
「Iクワドラントで必要なスキル」は、資本、つまりお金を集める方法だ。
投資をするためには、銀行や株式市場でお金を集めるスキルが必要になる。
そして、規律正しさ
セールスのトレーニングを受け、ビジネスを拡大するためのシステムを探し、資本を集めて投資をする方法を学べば、起業家として新たな世界に踏み出すことができるとキヨサキは言う。
もちろん、そうするためには人をまとめていくリーダーシップや常に学ぶ姿勢、人間的な強さなども必要となる。
だが、それだけではない。
キヨサキは最後に、「自分のやりたいことをやりたいようにやりたい」と考えている起業家は、そのことだけで失敗すると自戒をこめて警告する。
EからS、SからB、BからIと進むにつれて、「規律正しさ」が求められるからだ。
このように、起業家になるためには学ぶべきことが多く、それも短期間に学ばなければならない。
『黄金を生み出すミダスタッチ』では、キヨサキとトランプという二人の起業家が、自分の体験を惜しみなく語っている。
起業したいと考えている人だけでなく、すでに起業した人にとっても、勉強になるだろう。