改憲は自民党任せ?
自民党は以前から、いまの憲法は古くなって時代にそぐわないところがあるから変えるべきだと言っていたが、自民党の茂木幹事長は6月20日、参議院選挙が終わったらできるだけ早く憲法改正案を国会に提出したいと記者会見で語ったという。
今度の選挙が終わったらいよいよ憲法改正に着手するつもりだが、自民党が考えている憲法改正案が国民に示されるのは選挙後になる、ということだ。
つまり、今の憲法のどこをどう変えたいのかを示さないまま、憲法を変えるから与党を信じて内容は任せてくれ、今回の選挙では自民党に憲法改正を任せるという意味で一票入れてほしい、と国民に向って言っていることになる。
憲法改正案を出すには一定の国会議員(衆議院100人以上、参議院50人以上)が必要で、現状では自民党しか出すことが出来ないし、いったん改正案が出されたら他党の意見でそれを修正させることはできないようだ。
緊急事態条項とは?
では、自民党は現行の憲法のどこをどう変えたいと考えているのか。すでに発表されている自民党の憲法改正草案から、その内容をある程度推察することはできる。
まず、よく指摘されるのが、憲法9条の「戦争の放棄」を「安全保障」に書き替えるという点。
これは、日本が戦争できる国になることをめざしているということだろう(燃料も食料も自給率が低いのに、戦争に前向きで大丈夫なのだろうか)。
これに関連して取り上げられるのが「緊急事態条項の新設」で、何か不測の事態が起こったときには、国会を開かずに内閣だけで物事を決めて進めることができるようにするという条項だ。
大規模災害などの際にスムーズに対応できるようにと言うが、ある日突然「緊急事態」が宣言されてそれがずっと取消されなければ、実質的には内閣が独裁政治を行うことができ、誰もそれを止められないという事態も考えられる。
実は、これは1889年(明治22年)に公布された大日本帝国憲法にさえなかった条項だ。
民主主義や人権・社会保障を捨てる?
さらに、自民党の憲法改正案では、「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」という97条の条文がごっそり削られる。
また、「公務員による拷問を絶対に禁ずる」という条文から「絶対に」を削除するほか、「家族は互いに助け合わなければならない」という条文を新たに作るなどの改正を考えているようだ(これは社会福祉の削減を意図しているようにも見える)。
言ってみれば、人権や福祉・社会保障の面では、何世紀も前に戻ってしまうということになるが、はたしてそんな後ろ向きな国が、国際的な信頼を失わずにいられるのだろうか。
民主主義や人権意識を捨てた国と見なされて経済的にも力を失い、国として大きな損失になるのではないかと本当に心配になってくる。
憲法は国のありようの根幹をなすものだ。今度の選挙は、憲法をどうするのかを決める重要な選挙であることを理解し、よくよく考えてどうか投票に行ってほしい。