日銀の総資産は国のGDPに匹敵
6月2日の報道によると、今年の5月末時点で、日銀の総資産が初めて500兆円を突破したそうだ。この500兆円という数字は、国の経済規模を示すGDP=国内総生産に匹敵する額だというのだから、その大きさがわかるだろう。
なぜ日銀の資産がこんなに増えているのか、ちょっと振り返ってみよう。
2012年末に発足した第二次安倍内閣は、デフレから脱出しインフレへと日本経済を導くため、「アベノミクス」に力を入れていくことを宣言した。
そして2013年4月、日銀総裁に黒田東彦(はるひこ)氏が就任すると、2%のインフレ目標を2年程度で実現するとして、日銀が供給するお金の総量(マネタリーベース)を2年間で2倍にするなど、大胆な金融緩和に踏み切った。
総資産の85%は国債
つまり、日銀はたくさんお札を刷って市場に供給し、そのお金がうまく働けば経済が上向き、デフレを脱却できると考えていたわけだ。
だが、その効果があまり見られないため、2014年10月末には、さらに国債やETF=上場投資信託などの資産を大量に買い入れて市場に資金を供給する、大規模な金融緩和を進めることにした。
その結果、日銀の総資産は約3倍にまで増えて、今や日本のGDPに匹敵する500兆円を超えることとなった。
ちなみに、日銀総資産の85%を占める国債の保有残高は427兆2495億円で過去最高を更新、このほかETFが13兆9603億円、REIT=不動産投資信託が3940億円となっている。
出口はどこに?
この大規模な金融緩和によって、東証株価はこの間、大きく上昇しつづけてきたと言ってもいいだろう。
それと同時に、日本銀行と年金積立金管理運用独立法人が、東証一部に上場する企業のおよそ半数で、事実上の大株主となっているとも指摘され、このまま行くと日本企業の多くが実質上の国有企業になってしまうのではないかと揶揄する声さえ出ている。
この先、日銀はまだ国債やETFなどの買い入れを続けるだろうと言われているが、いつかは必ず「出口政策」をとらなければならなくなるはずだし、買い入れた資産を売却する局面もやってくる。
その時、日本経済はうまくかじ取りができるのか、かなり厳しい状況に立たされるのではないかと心配する声が根強いことを、私たちは頭の隅に置いておいたほうがいいだろう。