民法改正で離婚後共同親権に?

  1. 法制審議会で異例の多数決
  2. 実質的な離婚禁止制度?
  3. 家庭裁判所はパンク状態
  4. すでに離婚した夫婦にも適用される

法制審議会で異例の多数決

法務省は今年の3月に「離婚後共同親権」を導入するための民法改正法案を国会に提出するというニュースが流れている。

これは3年ほど前から法務省の法制審議会で検討を始めたもので、先月末、全会一致に至るのが原則であるにもかかわらず異例の多数決で要綱案を決めたようだ。

つまりは長い期間をかけて議論をしたものの、反対意見が根強かったということだろう。

さらに要綱案の決定後、すぐに「離婚後共同親権制度」導入に反対する署名活動が立ち上げられ、1週間ですでに4万5千筆を超えているという。

いったいこの法案の何が問題なのだろうか。

実質的な離婚禁止制度?

婚姻中のカップルは、当然ながら父と母が共同で子の親権を持ち協力して養育しているわけだが、今の法律では、離婚した後は父か母のどちらかが単独で子の親権を持つことになっている。

今回の法改正は夫婦の関係が破綻して離婚した後も、父母が共同親権を持つようにできるというものだ。

どちらかが単独親権を持つこともできるが、話し合いで決まらない場合は、基本的に共同親権となる。

では、「離婚後共同親権」制度が導入されるとどうなるか。

ごく単純化して言うと、離婚した後に子どもを保育園に入れるにも、学校進学や塾通い、入院や引越しをするのにも、両方の親の同意が必要になる。

どちらか一方の親が拒否すれば、進学も入院も引越しも習い事もできなくなり、いちいち裁判所の判断を仰いで解決しなければならないということだ。

つまり、離婚した相手との関係が強制的に継続するわけで、子どもがいる人に対しては実質的な「離婚禁止制度」となりかねない。

家庭裁判所はパンク状態

法務省の説明を読むと、子連れで別居したり実家に帰ったり(あるいは一時外出したり)した場合でも、共同監護権に抵触する可能性があるらしい。

ドメスティックバイオレンス、いわゆるDVなどがあった場合は適用されないとしているが、現在でも家庭裁判所ではなかなかDV(特に身体暴力以外のケース)を見極めることはむずかしく、実際に認定されている数は少ないという。

意見の一致を見ない場合には裁判所に判断を仰ぐというが、家庭裁判所は人員も予算も不足しすでにパンク状態で、職員の労働組合からも今回の法改正に対して懸念の声明が出されているほどだ。

そして政府は裁判所での対応が大事だと言いながらも、家庭裁判所の予算と人員をさらに削る予算案を立てている。

また、実際にこの制度の影響を受けるのは当事者だけでなく、学校や病院をはじめ子どもにかかわるあらゆる組織が、トラブルを避けるために両親の意志をいちいち確認する必要に迫られることだろう。

すでに離婚した夫婦にも適用される

つまり「離婚後共同親権制度」が導入されると、子どもがいる夫婦の場合、共同生活が破綻していても相手との関係が解消できないことになる。

さらに、すでに離婚が成立していて自分が単独親権を持っている場合も、子どもが未成年の間は離婚した元パートナーが新たに共同親権を主張することが可能になるという。

では事実婚なら縛られないかというとそうはならないようで、子どもがいれば離婚後の夫婦と同じく共同親権制度に組み込まれることになると明記されている。

ということは、パートナーとの関係が法的にどうであれ、子どもを持ったら親同士の関係を解消することがむずかしくなる制度だということだ。

もちろん、両親がいてどちらも子どもの養育に熱心だというのが理想なのはわかるのだが、こうした法改正で少子化に歯止めがかかるのか、あるいは子どもを持つことはリスクだと考える人が増えるのか、果たしてどちらなのだろうか。