小売が大きく落ち込む
ご存じのように、10月1日に消費税が8%から10%に引き上げられた。食品など一部は「軽減税率」で8%に据え置かれたが、テイクアウトかイートインかで税率が変わるというこの仕組みのせいで、一部で混乱も生じているようだ。
増税前から、消費税率の引き上げで景気が落ち込むのではないかと懸念されていたが、その予測どおり、10月の小売業販売額は前月比14.4%のマイナスとのニュースが流れている。
値の張る高額商品ほど、増税前の駆け込み需要もあって増税後の落ち込みが大きい。
10月の首都圏マンションの販売数は29.5%と過去最悪の落ち込みとなったほか、新車販売総台数は24.9%減(速報値)、百貨店の売上は17.3%減、家電専門店の売上も14.2%減とそれぞれ大きく落ち込んでいるという。
消費税は20%まで上がる?
低額商品なら消費税増税の影響を受けないかというと、少額のものは販売価格へ値上がり分を反映することがむずかしい。近所の食堂がこれを機会に店を閉めることになった、といった話もちらほら聞こえてくる。
この落ち込みは一時的なものでしかないのか、はたして増税で税収は増えていくのだろうか、という疑問が湧いてくるのを押さえられないが、経団連や財務省などは消費税をさらに引き上げるべきだと考えているようだ。
財務省は、消費税を将来は20%まで引き上げることを考えているというが、それは「安定的な財源を確保して、社会保障を全世代型に転換し、次世代に引き継ぐため」に必要だと説明している。
だが一方で、消費税が引き上げられるたびに法人税が引き下げられているのは明らかな事実であり、消費税増税分は社会保障の財源にまわされているわけではなく、法人税減税の穴埋めなのではないかという疑念も浮上している。
医療費負担増と年金支給開始年齢の引き上げ
今月になって厚労省は、75歳以上の受診時の窓口負担を「原則1割」から「原則2割」に引き上げることを検討していると公表した。
これは、負担率で考えると1割増だが、支払額だと一挙に2倍になる勘定だ。収入の減る高齢者が医療費の負担増にどこまで耐えられるのか、不安になる。
また政府は、70歳まで就労機会を確保できる法案の提出を検討中とのニュースが流れ、さらに年金の支給開始年齢が引き上げられようとしているのがわかる。
社会保障充実のためという理由で消費税が引き上げられたはずなのに、この国はどこへ行こうとしているのか。疑問がぬぐえない。