手押し車いっぱいのお金
ロバート・キヨサキの著書『金持ち父さんのセカンドチャンス』には、1918年から1924年にかけてドイツでおこったハイパーインフレの際のショッキングなエピソードが紹介されている。
この時期にドイツは紙幣を大量に刷ったため、マルクの価値が急激に下がり、パンを買うのにも手押し車いっぱいの紙幣が必要なほどだった。
あるとき、買い物に出た人がちょっと目をはなしたすきに、手押し車が盗まれてしまったが、積んであった紙幣はその場に残されていたという。
紙幣の価値がどんどん失われていくのなら、たしかに紙幣よりも物の方が価値が高いのかもしれないが、そうなると、お金というのはいったいなんだろう、という疑問が生まれる。
1万円札の原価は22円程度
当然のことながら、紙幣自体に価値があるわけではない。
参考までに調べてみると、日本の現行の紙幣、たとえば1万円札の原価は22円程度らしい。
では何によってそれが1万円の価値を持つかと言うと、国の中央銀行である日本銀行がその紙幣を発行している、という信用によって裏書きされているからだ。
その信用を支えているのは、日本という国がどれだけの経済的な力を持っているか、という数字だということになる。
日本の人口は減少傾向
日本はここ数年、「アベノミクス」の旗印のもとに大規模な金融緩和を行い、大量に通貨を発行してきた。
それと同時に、日本の人口ははっきりと減少傾向に移行し、高齢化もかなり鮮明になっている。
つまり、裏付けとなる経済力が低下しているのに、通貨の総量を増やしているというわけだ。
この日銀の未曽有の金融緩和は出口が見えていないと以前から懸念されているが、はたしてこの先、安倍政権がとるべき道はどのようなものになるのか、誰かそれを見極めている者がいるのだろうか。