裁量労働制は「定額働かせ放題」プラン?

  1. 「働き方改革」と裁量労働制
  2. 連日の深夜残業でも残業代ゼロ?
  3. 企業は儲かれば何をしてもいい?

「働き方改革」と裁量労働制

テレビや新聞がオリンピックの話題で盛り上がっているなか、いま国会では、安倍政権が進める「働き方改革」に向けた法律改正が論議されている。

焦点になっているのが裁量労働制の拡大だ。

裁量労働制とは、「裁量が与えられる一定の業務に携わる労働者について、労働時間の計算を実労働時間ではなく「みなし」で行うことを認める制度」であり、働き方というよりもむしろ労働時間をどう計算するかにかかわるもののようだ。

最低賃金で働く人や非正規雇用の人まで裁量労働制の範囲に含めたいと与党は明言しているが、そうなった場合、実質的に実労働時間が増えて時給はぐんと下がるだろうし、さらには時給という概念が消えてしまうことになるかもしれない。

連日の深夜残業でも残業代ゼロ?

裁量労働制が適用される範囲が広がるというと、「労働者に裁量が与えられて自由な働き方が可能になる」と新聞にも書いてあるし、そう思っている人も多いようだ。

だが現実には、仕事にどれだけ時間がかかろうと経営者は決まった額しか支払わないことになり、ノルマ達成のために連日深夜まで働いても残業代がゼロ、といったことにもなりかねないと労働問題の専門家は指摘している。

いわば「定額働かせ放題」プランという表現がぴったりだというのだ。

与党は裁量労働制によって労働時間が短くなるというデータを示して裁量労働制の拡大が「働き方改革」につながると説明していたが、そのデータの取り方自体が不適切でごまかしがあると野党に指摘され、いままさに国会が紛糾している。

企業は儲かれば何をしてもいい?

「金持ちはお金のために働かない」と、ロバート・キヨサキは「金持ち父さん貧乏父さん」の中で述べている。

確かに、起業を目指すなら、「残業代をいくらもらえるか」よりも、「これをやることで何が掴めるか」で仕事を選ぶことが大事になってくるだろう。

だが同時にキヨサキは、もし専門職として雇われて働くなら、労働者としての権利を守るために貧乏父さんのように労働組合に入ることが大事だろうとも述べている。

また、経営者は雇用を作りだす役割を担っていて、まず雇った人に賃金を支払い、自分の報酬は最後に受け取る、とも言っている。

企業が儲かるためなら何をしてもいいというわけではない。

これ以上、日本の労働環境が悪化しないよう、政府も企業も働く人もよく考えていかなければならない。