円は下がり資源は上がる
ここ半年ほど1ドル109円から110円あたりをうろうろしていた為替が、10月18日には114円台になり、ジリジリと円安に向かっている。
同時に原油が高くなり、ガソリンの値段が上がっているのはご存じのとおりだ。
高くなっているのは原油だけではなく、金銀などの貴金属から銅や鉄、さらには小麦やコーヒーなども値上がりしているという。また、半導体が品不足となり、日本国内では自動車や電気製品をはじめ、さまざまな製品の生産に支障が出ているとの報道もある。
手取りは下がり物価は上がる
一方で、国内の景気はよくない。
コロナ禍で活動が制限され消費が低迷しているというのもあるが、それ以前にここ25年ものあいだ日本の賃金はほとんど増えず、それなのに税金や社会保険料は上がって手取りはむしろ減り、国民の生活がじり貧になっているのが最大の原因だろう。
それにもかかわらず、首都圏の中古マンションの価格は1年前と比べて10%ほど(場所によってはそれ以上)値上がりしているという。
値段がはっきり上がるもの以外にも、内容量が減るなどして見えない形で「ステルス値上げ」がされている物もふえている。
「景気が後退していく中でインフレーション(インフレ、物価上昇)が同時進行する現象」をスタグフレーションと言うが、いまの日本の現状はまさにこの言葉がピッタリと当てはまるのではないか。
長年行われてきた企業への優遇措置
振り返ってみると、1989年に日本に消費税が導入され、3%から5%、8%、10%と引き上げられるたびに、法人税は引き下げられてきた。
また、1986年にできた派遣法は改正のたびにその適用範囲を広げ、結果として企業の人件費負担(社会保険料の会社負担を含む)を大きく引き下げてきた。
さらには、2013年からのアベノミクスでは、輸出産業に有利なようにとの理由で、円安(および株高)への誘導がなされた。
これだけの優遇の中で日本の企業は内部留保を増やしてきたわけだが、はたして本来企業として伸ばすべき競争力をつけることはできたのだろうか。
それが獲得できていないからこその経済低迷ではないか、日本経済に明日はあるのか、と心配になる。