韓国でクーデター未遂
12月3日の深夜22時半、韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が戒厳令(非常戒厳)を発令し軍隊を出動させたという驚くべき情報がネットで流れた。
テレビではNHKも民放もほとんど報じていなかったため、現地にいるジャーナリストや韓国事情に詳しい人が発信する情報をSNSで得るしかなかった。
韓国の国会議員たちは軍隊が封鎖した国会の塀を乗り越えて議場に入り4日午前1時に非常戒厳解除要求案を可決、市民も国会周辺に集まって議員たちを支援し、大統領は午前5時の閣議でこの要求案を受け入れた。
6日には検察が内乱容疑でユン大統領に対する捜査を開始し、戒厳令発令を大統領に進言したとされる金龍顕前国防相を緊急逮捕したと伝えられる。
大統領によるクーデターはこうして数時間のうちに未遂に終わったが、韓国では一週間たった今も大統領の辞任を求めて市民がデモを行い、国会では弾劾訴追案可決をめぐって与野党が攻防を続けている。
国民が主権者として動く民主主義
その後の情報によると、大統領が軍に命じたのは国会や選挙管理委員会の封鎖、与野党主要政治家の逮捕拘束のほか、北朝鮮への攻撃も含まれていたが軍隊がこれを拒否したという。もし実行されていたら果たして何が起こっていただろうか。
実は数ヶ月前から、大統領周辺に不穏な動きがある、クーデターを起こすのではないかといった噂が浮上していて、警戒を呼びかけるとともにいざとなったら国会議員を支援しなければという話が流れていたらしい。
国会周辺で行われている大統領の弾劾を求めるデモは若い参加者も多く、ペンライトを振りながら歌ったりとさながらコンサート会場のような光景が流れてくる。国民が民主主義を守ろうと自分たちの意志で動いているのが感じ取れる。
光州事件を見るまでもなく韓国の民主化運動は熱くまた根強いものであり、その根底には日本植民地時代の抗日運動から続く長い抵抗の歴史があることも忘れてはいけない。
また、戒厳令という強い権限を大統領が持っているのは韓国が未だに休戦中であり緊急事態に対応するためだということや、自民党がいま提示している改憲案に組み込まれている緊急事態条項は戒厳令と同じような大きな権限を権力者に与える危険性をはらんだものであることも知っておこう。
シリアのアサド政権崩壊
今年はイギリス、アメリカ、ドイツなどでの政権交代に続いて韓国のクーデター未遂があり、12月5日にフランスで62年ぶりに内閣不信任案が可決されたという。
激動の1年だなと思っていたら、8日にはシリアのアサド政権が事実上崩壊し、アサド大統領とその家族は飛行機で国を離れたというニュースが流れた。その後モスクワに到着し亡命を認められたようだ。
長らく続いた圧政からようやくシリアの人びとが解放されて喜ばしいと西側メディアが報じる一方で、イスラエルが首都ダマスカスをはじめ主要都市を砲撃しシリア国内に進撃、多くの資源が埋蔵されているゴラン高原に軍勢力を置いて緩衝地帯としたことが報じられている。同時にアメリカ軍トルコ軍もシリア国内に勢力を進めているという。
イスラエルにはパレスチナ、レバノン、シリア、イエメン、イラク、トルコ、エジプト、サウジアラビアをまとめて大イスラエルを建設するという構想がありその実現に向かって進んでいるのではとも言われているが、いずれにせよアサド政権崩壊で中東のパワーバランスにかなりの影響があるのは間違いがないだろう。