第三者委員会の報告書
女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」の企画販売会社スマートデイズ(4月にすでに破綻)をめぐるスルガ銀行による不正融資の問題は、このコーナーでも何度か取り上げてきた。
9月7日、スルガ銀行が第三者委員会による報告書を公表したことで、この問題は新たな段階に入り、スルガ銀行の先行きを不安視する声が上がっている。
この第三者委員会の報告書は338頁もあるものだが、ネット上でだれでも読むことができるので、不動産投資や金融業に興味のある人は一部だけでも眺めてみてほしい。
報告書では、スルガ銀行での改ざんや不正の実態、シェアハウスを含む不動産投資などへの融資「パーソナルファイナンス」に業績依存して審査がおろそかになっていたこと、行内でパワハラが横行していたことなどが明らかにされている。
代表取締役社長の辞任
なぜそんなことが起こったのかと言えば、過大な業績目標が設定されて、それを達成するために現場にプレッシャーがかけられていたからだと報告書は分析している。
つまりは現場の声を聴かずに無謀なノルマを設定していたわけで、ある行員は「釣り堀に魚が10匹いないのに10匹とってこいといわれる状況」だったと述べている。
一度こうした状況になると、組織というものはなかなか自浄作用が働かないのだろうが、本来なら会社のかじ取りをする経営陣が気づいて改めるべきものだろう。
今回、当然ながら第三者委員会は、会社に対する取締役の「善管注意義務違反」(善良な管理者としての注意義務を怠ったこと)があったと認定し、岡野光喜・代表取締役会長ら役員5人が7日付で辞任した。彼らは不正融資についての直接関与は否定している。
とびぬけた業績の地方銀行だったのに
シェアハウス「かぼちゃの馬車」関連の融資は2035億円にのぼるが、スルガ銀行が収益還元法で行っていた担保価値評価は積算法評価の1.7倍だったという。
「かぼちゃの馬車」のオーナーたちは現在、融資をしたスルガ銀行にも落ち度があるとして、融資の撤回を求めて訴訟を起こしている。
スルガ銀行といえば、この件が発覚するまでは地方銀行でも飛びぬけた業績を誇る優良企業として雑誌などでも取り上げられ、就活生の人気も高かったが、一方で、不動産投資家のあいだでは数年前から、「他行でダメでもスルガなら借りられる(金利はかなり高いけど)」と言われていた。
まっとうなことをしていたのでは儲からないのかもしれないが、やはり、守るべき枠を踏み外すと、いつかそのツケがくるということなのだろう。