不動産投資が身近になった
不動産投資がサラリーマンにとって身近なものとなって久しいが、どうやら今世紀に入るまでは、不動産投資とはもともと土地をもっている地主さんが相続対策のために行うものだったようだ。
ここ十数年の動きを不動産投資ブームと言っていいのだろうが、そのきっかけのひとつとして、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』があったのは確かだろう。
『金持ち父さん貧乏父さん』がベストセラーになってしばらくして、喫茶店などで隣の席の若いサラリーマンの間から「中古のアパートを持っているんだけど」といった話が聞こえてきて、新鮮に感じたのを覚えている。
さらにしばらくすると、「不動産投資家になりたい」と公言したり、まだ物件を持たないのに「不動産投資家」の名刺を持ってセミナーに出入りする若い人が増えてきた。
「買いたい病」にかかった人たち
ブームが過熱するにつれ、不動産投資本も多く出されて、物件数や投資規模、さらには規模拡大のスピードを誇る派手なタイトルが増えていった。
それにつれて、「買いたい病」と一部で揶揄されているように、物件を買うこと自体が目標になった人たちも増えていったように感じる。
しかし、そのブームも昨年の「かぼちゃの馬車」の件をきっかけとした融資の引き締めによって、どうやら一段落したようだ。
あの一件は、そうしたブームの熱にうかされて踊った人たちと、この不況下で融資先を見つけたいという金融機関と、とにかく利回りを高く見せて物件を売って儲けたいという建築業者、この三者の思惑が一致して起こった悲劇だったのだろう。
投資は地味なもの
投資のベテランに言わせると、不動産にせよ株にせよ、投資というのは本来、地味な作業の繰り返しだという。
特に、不動産投資は購入前のシミュレーションで予測のつく割合が高いとされる。
逆に言うと、一度買ってしまったら方向修正がなかなかできないので、とにかくシミュレーションと情報分析を細かく行うことがキモだということだろう。
買いたい病の熱に浮かされ、きちんとシミュレーションをせず現実を直視しないで物件を買ってしまった人たちは、この先どうなるのか。ちょっと心配になってきた。