税制は政府がとる奨励策である
10月末に刊行されるトム・ホイールライトの新刊『資産はタックスフリーで作る』によれば、税制とは、「政府が奨励したいと思っている国民の活動に対して報奨金を出して推進していく制度」だという。
国によってさまざまな事情や奨励したい活動は違っていても、この役割を税制が担っていることは世界中どこの国でも共通していると彼はいう。
よく知られている例だと、たとえばアメリカでは国内にある資源を活用するために、石油掘削事業などへの投資やビジネスについて、手厚い奨励策がとられている。
それを聞いて、ひとつ疑問が浮かんだ。「日本政府は実は少子化に歯止めをかけたいと思っていないのではないか?」という疑問だ。
子どもの出生数がついに90万人を割り込んだ
日本の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むことが見込まれる子供の数を示す指標)は、2005年に1.26という最低の数字を記録してから2015年まで上昇してきたが、これは団塊ジュニア世代が子どもを持つピークが予測よりもずれ込んで訪れたものだとされている。
2016年からは子どもの出生数は下降に転じてついに100万人を割り込み、2019年には90万人を下回る可能性が強くなったと、先日ニュースで報じられた。
国民の人口イコール国力であることは明らかで、このまま人口が減っていっては、日本の経済が勢いを失っていくことは目に見えている。
だが、日本政府の政策を見ると、これに対する手を打っているようにはとても見えない。
16歳以下の子どもの扶養控除がない
驚くのは、現状では0歳から16歳の子供について、所得税の扶養控除がないことだ(住民税は扶養控除がある)。
これは民主党政権時代に子ども手当を手厚くしたのに伴って扶養控除をなくしたのだが、そのあと自民党政権になって子ども手当を大幅に削ったのに扶養控除は元に戻さずそのままに放置した、という経緯があったようだ。
また、今年から幼稚園保育園の無料化が始まったと言うが、いちばんお金のかかる0歳から2歳の間の保育料は有料で、それ以降もこれまで保育料に含まれていた食費が有料となったため、この無料化は有名無実だと感じる親も多いようだ。
つまり、子どもを育てている親を政府がそれほど積極的に後押ししていないことになる。
平成になってからの30年間に、0%だった消費税が3%⇒5%⇒8%⇒10%と段階的に上がり、非正規雇用者が4割まで増大し、正規雇用でもほとんど給与が上がっていない。
こうした厳しい状況の中、少子化対策のひとつの手立てとして、せめて子どもを持つ親の所得税の扶養控除くらいは手厚くなってもいいのではないだろうか。