ハイパーインフレの破壊力

  1. ジンバブエの事例
  2. お金が価値を失い、ものがお金の代わりとなる
  3. 通貨の過剰供給が元凶となる

ジンバブエの事例

ロバート・キヨサキは、新刊『こうして金持ちはもっと金持ちになる』(筑摩書房刊)のなかで、ジンバブエのハイパーインフレーションについて書かれた『通貨が国家を破壊する時』という本を紹介している。

著者はフィリップ・ハスラムという南アフリカの公認会計士だ。

ハイパーインフレーションといえば、1918年から1923年にかけてドイツのワイマール共和国で起こった1兆%ものインフレが歴史上有名だが、アフリカのジンバブエでは1997年から2008年の11年間でインフレ率がなんと10の22乗(1兆×100億)%を超えたというのだ。

その結果、ジンバブエドルは最高で100兆ドル札という高額紙幣が発行される事態にまで至り、デノミが行われた後で自国通貨の発行をやめ、6か国の外貨を採用、そのうち主に米ドルと人民元が使われるようになって、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。

お金が価値を失い、ものがお金の代わりとなる

『通貨が国家を破壊する時』は、このジンバブエのハイパーインフレーションのせいで、貨幣価値が破壊され、人々がどんなに苦しんだかについて、次のような生々しいエピソードを集めている。

  • ある夫婦が生き延びる為に自分の家を売ったが、3,4年しかお金がもたず、南アフリカの息子を頼って出国したものの、2年後には貧困のなかで死亡した。
  • ある人が50年間勤めている間に投資していた積立年金を投資会社が一括払いで支払うと言ってきたが、そのお金は20リットル足らずのガソリンを買うだけしかなかった。
  • 政府はジンバブエドルの使用を強制したが、価値を失っていくばかりなのでだれも喜んで受取りはしなかった。
  • 食料品がお金と同じ役割を担うようになり、だれもが食料庫に厳重にカギをかけた。

通貨の過剰供給が元凶となる

ジンバブエのハイパーインフレは収まったが、南米ベネズエラでは2015年110%、2016年250%、2017年(10月まで)600%超と、今まさにハイパーインフレが進行中だ。

2国とも天然資源に恵まれた豊かな国なのに、なぜそんなことになったのかというと、ハイパーインフレはほとんどの場合、マネーサプライの急増により貨幣価値が毀損されることから始まる。

通貨を過剰供給する⇒貨幣価値が毀損される⇒ハイパーインフレがおこるというメカニズムは、どんな国でも起こる可能性がある。

通貨の過剰供給は、そういう危険性を孕んだものであることを、肝に銘じておく必要があるだろう。