水道が民営化される日

  1. 道民営化法案が衆院通過
  2. 共事業の売却は誰にとってプラスか
  3. 再び公営化した国も

道民営化法案が衆院通過

7月6日、松本智津夫をはじめとするオウム真理教事件の死刑囚7名の死刑が執行され、そのニュースでTVは一日中埋め尽くされた。

前日の7月5日には、衆議院で水道事業の運営権を民間に売却できる仕組みを導入することなどが盛り込まれた水道法の改正案が採決され可決されたが、オウム死刑囚のニュースにかき消されてほとんど報道されることはなかった。

この「水道民営化法案」は、それまでもあまりマスコミで取り上げられてこなかったが、大きな問題をはらんでいると以前から一部で指摘されていた。

水道は文字通りライフラインであり、それを民間企業にゆだねてしまっていいのか、私たち国民の生存権にかかわる問題ではないか、と問う声が上がっていたのだ。

共事業の売却は誰にとってプラスか

そもそもこの水道民営化は、麻生太郎氏(現在の財務大臣)が2013年4月にアメリカのシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)での講演で宣言してから進みはじめたと言われている。

一説によるとフランスの大手水道会社に麻生太郎氏の娘婿がいて、その会社と麻生グループが提携関係にあるという噂も流れているが、そのあたりの真偽についてはわからない。

だが、自民党や公明党、あるいは維新の会などが公共事業の売却に積極的姿勢を示していることは確かで、自民党政権と近しい関係のパソナグループ取締役会長の竹中平蔵氏も、以前からインフラの運営権を民間に売却することで財政が改善すると提言している。

また、老朽化が懸念される水道事業を今のうちに民間に売ってしまったほうがいいという意見も与党内にはあるようだ。

だが普通に考えれば、それは結局、利用者に負担がはねかえってくることになるのではないだろうか。

再び公営化した国も

海外では、水道の民営化が失敗した例も少なくないようで、たとえばパリ市では、水道民営化で水道料金が倍以上に値上げされ、苦労したあげくに公営に戻したという。

マニラやボリビアでは1990年代後半にアメリカのベクテル社が水道事業に参入して水道料金が跳ね上がり、貧困層が水道の使用を禁止されたり、大規模なデモがおこなわれて暴動に発展したりしたようだ。

公共事業の民営化と言えば国鉄民営化で過疎地の路線が廃線になったことが思い出されるが、たとえば「この地域は水道事業の採算が取れないのでもうやめます」というようなことがあった場合、もはやそこには住めなくなるのではないか、という懸念もある。

賛否はともかく拙速は避けて、国会で決める前に法案について広く報道し、慎重に議論していくことが必要なのではないだろうか。