生活保護は誰のため?

  1. 「生活扶助基準の引き下げ」とは?
  2. 社会全体の底が抜ける
  3. 消費が経済を支えている

「生活扶助基準の引き下げ」とは?

先日、「生活保護で支給される食費などの生活扶助について、厚生労働省が基準額の引き下げを検討する」というニュースが報じられた。

その理由としては、「厚生労働省の専門家会議による調査で、大都市の子どもが2人いる世帯などで、生活扶助の金額が一般の低所得世帯の生活費を上回ったことがわかったため」だと言う。

つまりは生活保護を受けている人と比べてもっと貧困にある人がいるから、生活保護の額を減らすことにした、ということらしい。

だが本来は、生活保護の基準よりも低い収入で暮らしている人がいれば不足分を援助するという設計になっているのが生活保護という制度であるはずで、むしろ現状として「生活保護制度がきちんと機能していない」ことを問題視するべきではないだろうか。

社会全体の底が抜ける

しかも、生活扶助はすでに2013年から段階的に引き下げが行われ、子供がいる家庭ほど削減幅が大きい算出方法が使われてきたという。

政府に頼らずに生活することが大事だとキヨサキは言うが、そうした自立した生活を送る人を増やすためにも、困窮状態にある家庭が貧困から脱出できるように必要な期間支えることが大切になってくる。

生活保護というと不正受給の話がよく出されるが、実際には日本での不正受給の割合は0.6%程度に過ぎず、しかもその大半が収入金額の申告の誤りなど軽微なものだという。

さらに、もともと生活保護の捕捉率(本来は生活保護が必要な人のうち実際に受けている人の割合)は日本では2割程度と、国際的にみると非常に低いままであることもずっと指摘されてきた。

そして、格差が拡大し困窮する人が増えれば、社会が不安定になり問題が増えるのは目に見えている。

消費が経済を支えている

また、生活扶助基準は生活保護の支給額だけにかかわるわけではなく、生活保護を受けていない人にもさまざまな面で影響する。

例えば、国民年金や国民健康保険料、保育所の保育料、介護保険料、就学援助制度、私立高等学校や大学の授業料など、収入の少ない世帯が受けられていたさまざまな費用の減免や優遇措置のハードルが上がり、そうした世帯の生活をさらに苦しくさせる結果につながる。

経済全体で見れば、生活扶助は必ず生活費として消費に回るため、そこを削ればまた内需が落ち込むことになる。

消費が経済を支える大きな要素であることを忘れてはいけないのではないだろうか。